【書評】コンビニ人間
2016/11/22
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今更さらながら2016年芥川賞作品である「コンビニ人間」を読みました。
今日はその感想、僕の感じたことをネタバレ無しで書いていきます。
作者について
1979年生まれの村田沙耶香さんは今年37歳。
芥川賞受賞前にも群像新人文学賞優秀賞や野間文芸新人賞、三島由紀夫賞など数々の賞を受賞しているものの、週3でコンビニにバイトとして勤務しているという異色の経歴の持ち主。
作家仲間からは「クレイジー沙耶香」と呼ばれ、コンビニ人間の芥川賞受賞時には、コンビニのバイトは続けるのかという質問に「店長に相談します。」と言い放ったユーモア溢れる方です笑
あらすじ
主人公は36歳の未婚女性、古倉恵子。
大学在学時に始めたコンビニのアルバイトは今年で18年目。
恋愛経験なし、職歴なしの彼女がより所としているのは、「コンビニ店員として働いている時は社会の歯車の一部となっている」という実感。
幼い頃から自分は普通ではないと勘付きながらも、周りの人間を傷つけぬよう、周囲の人間の身なりや妹の助言を参考に「普通」を装ってきた。
平和なコンビニでいつものように過ごすある日、婚活目的で新たにバイトとして入った白羽と古倉は出会う。
感想
現代における普通ではないことの生きにくさ、人間どこまでが本当なの?みたいなところがテーマなのかな。
2時間程度あれば十分読める長さで時系列です。
淡々と話が進むので、良い意味で大して頭を使わずともさくっと読めました。
読了後に残るモヤモヤ感が印象的。
僕はエンターテイメント全般において最後は笑えるパターンが好きなので、今回の作品は合いませんでしたが好きな人は好きだろうなといった作品です。
多かれ少なかれ、人には普通ではない部分ってあると思うんです。
少数派は多数派に土足で部屋に踏みいるような形で意見を否定され、さらにたちの悪いことに多数派には罪の意識すらないということが、今までの僕の人生でも往々にしてありました。
主人公を感情の欠落した人間として描くことで、必要以上に深刻な展開にはならず物語全体としては喜劇的な印象を受けるものの、その根底にあるものは深く、一言で面白かった、とすっきり言い表せるような作品ではありません。
僕は石油王の家に生まれた訳でもなければ信号無視して突っ込んでくる車を避けることも出来ませんが、そういった特殊なケースを除けばほとんどのことは自ら選ぶことが出来、その結果が今の自分だと考えています。
ただその選択においてどこまでが他人に気を遣った「普通」への一歩で、どこからが自分の根底からの意思表示なのかはまた別の話。
普通を装うことで得られることと失うもの。
わざわざ口に出すほどのことではないでしょうが、恐らく考えを巡らせて判断することは意味のないことではありません。
ケースバイケース、バランスを取って振り切り過ぎないように楽しく毎日生きていけたら死ぬ時の後悔は僕にとって多分ないだろうな、なんて読了後に考えることの多い作品でした。
それでは今回はこの辺で!
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