【書評】死神の浮力
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久しぶりに小説を読みました。
今回はレビューを書こうと思います。
小学生の頃あんなに嫌だった読書感想文も、何故か大人になると書きたくなるものですね。
これがもう少し歳を取ると「俺は昔から感想文を書くのが好きだった。」に変わり、最近の若い奴は〜に繋がる様な気がしなくもないです・苦笑
- 死神の浮力
- あらすじ(ネタバレなし)
- 感じたこと
1.死神の浮力
読みました。
伊坂幸太郎著 死神の浮力
定価(本体780円+税)
2013年に発表された作品が文庫化されたので買って読んでみた次第です。
8年前に発表された死神の精度の続編ですが、一冊でも完結しているのでこちらだけ読んでも楽しめる内容になっています。
漫画のような速度で疾走する文章を書くのが凄く上手で、昔から好きなんですよね。
かれこれ10年くらい、彼が発表した作品の9割は読んでいると思います。
電子書籍も読みやすくて良いのですが、たまには紙も良いですね。
重さがしっくりきていい感じでした。
2.あらすじ(ネタバレなし)
山野辺は自らの娘を殺し無罪判決を受けた犯人、サイコパスの本城へ復讐を誓う小説家。
妻である美樹、千葉と共に本城を追うが・・・。
主人公は調査部に所属する死神の千葉。
彼ら調査部の死神は、1週間対象の人間の行動を近くで見守り、対象が死んでも問題ない「可」か対象を生き永らえさせる「見送り」のいずれかの判定を行う業務にあたっている。
「可」と判断された人間は8日目に何らかの形で命を落とす。
ただ人の命に興味がなく、価値もないと考える千葉の下す判定はほとんどが「可」。
千葉は今回の対象者、山野辺を一週間見守った上でどう判定をくだすのか。
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3.感じたこと
「人は皆、いつか死ぬ。」
誰もが目を背けるような当たり前の真理を、死神の千葉は話の中で何度も繰り返します。
僕が初めて人間の死に触れたのは小学校6年生の頃の祖父の他界。
いつ行っても豪快に酒を飲みながら「おい、なんか楽しいことあったか?」と嬉しそうに尋ねてくる祖父を見るのが僕は大好きでした。
訊かれる度僕は、学校であったくだらないことを小学生ながらに少しでも祖父に笑ってもらえるよう構成を考えながら話していたように思います。
そんな祖父が他界した際の僕は「人は皆、いつか死ぬ」ということが実感としてわかっていなかったためか、ただ呆然とし立ち尽くしていました。
あれからもう18年が経ち、死というものについて改めて考えてみましたが、はっきりとした答えは見つからず、未だにこたえはもやの中です。
本書は、死とはこうあるべき、といったベストアンサーを示してくれるような本ではないものの、人間の決死の想いを描いた一冊。
残酷な描写や絶望も描かれていますが、どの話も最後には少しだけ救いがあります。
例えば25人に1人の割合で存在する良心を持たない人間(サイコパス)にそれ以外の24人は翻弄され、本人は平然としています。
ただ二千年以上続く人類の歴史の中で、良心を持たない人間ばかりが生き残ったかと言うとそうではないよね、とかね。
世の中には納得のいかないこと、理不尽なことが沢山あります。
そんな中でもいつもどこかに希望はあり、勝機は絶対にあるということを本書で伝えたかったのかな、と僕は感じずにはいられませんでした。
人の死という暗い題材を希望に変えて書けるのは間違いなく彼の才能です。
そして最後の3分の1はさすがの疾走感で一気に読ませます。
エンタメとしても非常に優秀な一冊ですので是非読んでみてください。
それでは今回はこの辺で!
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